世紀を超える響演 — Hall of Halls

ホール・オブ・ホールズ、大森たつし、神原瑶子

収録日時・場所 : 2024年2月28, 29日 萌木の村オルゴール博物館ホール・オブ・ホールズ
録音、ミックス、編集、マスタリング : 入交英雄
録音フォーマット : PCM 192kHz / 24bit

 

 

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Track List

曲目解説

1. 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲(大森たつし 編曲)

演奏:ピエトロ・マスカーニ(チッカリング ・9フィート・アンピコ・ グランドピアノ)、大森たつし(マリンバ)
作曲 :ピエトロ・マスカーニ

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(1890年)は、イタリア・ヴェリズモ・オペラを代表する作品として知られ、その間奏曲は全曲中でも特に広く愛されている名旋律。静謐な祈りにも似た弦楽の響きによって進行するこの楽曲は、劇中における重要な精神的転換点として配置され、オペラの枠を超えて独立した演奏機会を持つ作品となっている。 本演奏では、作曲者マスカーニ自身による演奏が記録された再現ピアノ(アンピコ・ロール)を用い、その歴史的演奏にマリンバを重ねることで、時代を越えた共演が実現。もともとオーケストラ作品として書かれた本作には、ピアノだけでは再現しきれない音響的広がりが存在しますが、本編曲ではマリンバがその響きを補完し、原曲の持つ精神性と豊かな音彩を新たな形で立 ち上がらせている。作曲者自身の演奏記録と現代の演奏者との協働によって完成された、時間を越えた音楽的対話といえます。 

2. 皇帝サルタンの物語: 熊蜂の飛行(大森たつし 編曲)

演奏:セルゲイ・ラフマニノフ(チッカリング ・9フィート・アンピコ・ グランドピアノ)、大森たつし(マリンバ)
作曲:ニコライ・リムスキー=コルサコフ

歌劇「皇帝サルタンの物語」(1900年)の一場面として書かれた「熊蜂の飛行」は、急速な音型 によって飛翔する熊蜂の動きを描写した、管弦楽的技巧の極致とも言える作品。その鮮烈 な運動性と明確な音楽的イメージにより、独奏作品としても広く演奏されるようになった。 本演奏では、作曲家としてもピアニストとしても20世紀を代表する存在であるラフマニノフ自身 による再現ピアノ演奏を用いています。ラフマニノフはアメリカ亡命後、再現ピアノのデモンストレーションにも関わっており、その卓越した技巧と表現力はロールにも克明に記録されています。 本編曲では、その歴史的演奏にマリンバが重ねられ、疾走感あふれる音響の中で両者が拮抗する かのような緊張感に満ちた音楽的競演が展開。再現ピアノの持つ機械的正確さと演奏者固有のニュアンスが交錯する、特異な音響体験をお楽しみください。 

3. チャールダッシュ(大森たつし 編曲)

演奏:リモネール1900、大森たつし(マリンバ)、神原瑶子(マリンバ)
作曲:ヴィットーリオ・モンティ

「チャールダッシュ」は1904年に作曲された作品で、ハンガリー舞曲の様式を基盤とした自由で即興的な表現と、緩徐部から急速部へと展開する劇的な構成によって広く親しまれています。民族的語法を背景に持ちながらも、演奏者の個性が強く反映される作品として、多くの編曲と演奏形態が生まれてきました。 本演奏では、大森の演奏におけるテンポの揺れや表現をデータ化し、それを基に伴奏パートを自動演奏楽器用に再構築することで、リモネール1900との共演を実現。さらに神原瑶子を加えたマリンバ・アンサンブルによって、多層的なリズムと響きの広がりが生まれています。歴史的自動演奏楽器と現代の演奏者の表現が融合することで、新たな室内楽的音楽空間が形成されてい る点も本演奏の大きな特徴です。 

「リモネール1900」について

1900年、フランスのリモネール社製によって製造された大型自動演奏オルガンです。
萌木の村 オルゴール博物館 ホール・オブ・ホールズの象徴であり、一番の人気を誇ります。1900年のパリ万博のために特別に制作されたオルガンで、その音色は2km先まで届くとされています。華麗な演奏とアールヌーヴォー様式の装飾パネルは19世紀末の雰囲気を現代に伝える貴重な資料です。

4. ハンガリー狂詩曲 S. 379a: 第2番

演奏:アルフレッド・コルトー(チッカリング ・9フィート・アンピコ・ グランドピアノ)
作曲:フランツ・リスト

1847年に作曲。ハンガリー狂詩曲集(全19曲)の第2番にあたる。この第2番は、全狂詩曲の中で最も有名で、リストのヴィルトゥオーゾ像を決定づけた一曲。アニメーションや映画でも取り上げられている名曲。リストはハンガリー生まれで、自身の民族的ルーツに強い誇りを持ち、この狂詩曲集は、当時「ハンガリー音楽」と考えられていたジプシー音楽の様式を素材に形成され、旋律の多くは純粋な民謡というより、ジプシー音楽(チャールダーシュ風)に由来します。第2番は、その様式を最も劇的・演劇的に昇華した代表作。

演奏は、アルフレッド・コルトー(1877年9月26日ー1962年6月15日)。コルトーは作曲家の魂を代弁し、詩情・精神性を選ぶピアニストと言われ、この姿勢が、この演奏にも顕著にあらわれています。音が言葉のように語られる緩やかなフレーズ、速いパッセージでは皮肉な笑いを含む人間の滑稽さを感じさせ、コルトーの音楽観が表現される唯一無二の演奏と言えます。自動演奏ピアノ(再現ピアノ)のアンピコ(Ampico)において、アルフレッド・コルトーが演奏したリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」のロールは、1921年に制作・リリースされた。コルトー自身が書いたカデンツァ(通称「コルトー・カデンツァ」)が含まれていることでも知られています。

5. ビゼーの「カルメン」の主題による変奏曲(ウラディミール・ホロヴィッツ 編曲)

演奏:ウラディミール・ホロヴィッツ(チッカリング ・9フィート・アンピコ・ グランドピアノ)
作曲:ジョルジュ・ビゼー

ロシアで演奏旅行をしている時にサラサーテが作曲したカルメン幻想曲(カルメン・ファンタジー)に触発されて作曲された。ホロヴィッツは楽譜の出版は望んでおらず、楽譜は自分のためのものとして保管していたと言われており、この曲の演奏を望むホロヴィッツのファンも多く、特にアンコールで頻繁に演奏された。この曲は時期によって異なるバリエーションで演奏されており、この演奏は1928年に記録されたもの。速いテンポ、鋭いフォルテ、超絶技巧で聴衆を驚かせたホロヴィッツ最初期の演奏が残されています。

6. 幻想的小品集 Op. 3: 第2曲 前奏曲

演奏:セルゲイ・ラフマニノフ(チッカリング ・9フィート・アンピコ・ グランドピアノ)
作曲:セルゲイ・ラフマニノフ

1892年作曲。19歳の作品とは思えないほど完成度が高く、ラフマニノフの名を一躍有名にした代表作。一方で、あまりに人気が出すぎて、彼自身は生涯この曲を何度もアンコールで弾かされることになり、複雑な思いも抱いていた。ロシア正教の鐘の響きを思わせる和音進行が特徴で、これは後年の《鐘》《交響曲第2番》などにもつながる、ラフマニノフ特有の音響世界の原点とも言えます。ラフマニノフはロシアに生まれ、1918年アメリカに渡り、コンサートピアニストとして活躍。アンピコ社(自動演奏楽器メーカー)のリプリデューシングピアノに数々の演奏の記録が残されています。初めは1本の穿孔された紙で正確な演奏を再現できることが信じられなかったラフマニノフだが、1919年に最初の録音のマスターロールの演奏を聞いて、「みなさま、私はたった今、私自身が演奏するのを聞きました!」と述べたと伝えられている。アンピコのための録音は、1929年頃まで続いた。同楽曲は、制作年1919年、ラフマニノフ自身の演奏を記録。アンピコは演奏の強弱(ダイナミクス)を極めて細かく再現できる「リプロデューシング・ピアノ」であり、このロールにはラフマニノフ独特の力強いタッチや繊細なテンポの揺れがそのまま刻まれています。

7. 滑稽なスケルツォ(猫とネズミ)

演奏:アーロン・コープランド(チッカリング ・9フィート・アンピコ・ グランドピアノ)
作曲:アーロン・コープランド

アーロン・コープランド(1900年11月14日~1990年12月2日)は、20世紀アメリカを代表する作曲家の1人。アメリカの古謡を取り入れた、親しみやすく明快な曲調で「アメリカ音楽」を作り上げた作曲家として知られています。この作品はジャン・ド・ラ・フォンテーヌの寓話詩「古い猫と若いねずみ(Le Vieux Chat et la Jeune Souris)」を基にして構想、1920年に作曲、コープランドが後に展開するアメリカ的な作風とは違い、当時のヨーロッパ的な印象派、モダン音楽の影響が色濃く出ています。コープランド自身の独自のリズムや音響に対する興味が芽生えた早期作品としても評価されており、その演奏は1920年代にコープランド自身の演奏によるピアノ・ロールとして制作・販売されました。これは演奏の「記録」としてだけでなく、当時の聴衆にコープランド自身の演奏スタイルを伝える役割も果たしている。

萌木の村 オルゴール博物館 ホール・オブ・ホールズ

山梨県清里、萌木の村オルゴール博物館「ホール・オブ・ホールズ」は、19世紀後半から20世紀前半にかけて制作された、スイスやドイツをはじめとするヨーロッパ、アメリカの自動演奏楽器約250台を所蔵する施設です。シリンダー・オルゴールやディスク・オルゴール、自動演奏オルガンやピアノ、ヴァイオリン、さらには自動人形まで、当時の最先端技術を駆使した多彩なコレクションを有しています。テレビやラジオのない時代、人々の生活の中で音楽を届けてきたこれらの楽器は、音楽文化と機械技術が融合した貴重な文化遺産です。館内では実際に演奏が行われ、その豊かな響きとともに歴史の息吹を体感できる点が大きな特徴です。音楽と工芸、技術が一体となった自動演奏楽器の魅力を、現代に伝える博物館です。

大森たつし
Tatsushi Omori

マリンバ・パーカッション奏者

洗⾜学園⾳楽大学卒業。⾓⽥桂⼦、岡⽥知之、クリストファー・ハーディ、⽩⽯元⼀郎各⽒に師事。1999年Marimba & Percussion Duo「Cheer’s」でデビュー。2001年より⽥辺製薬主催「マリンバソロリサイタル」を銀座⼗字屋にて5回にわたり開催。2004年「⽇本領事館主催コンサート」(スイス)、2005年「英国王⽴⾳楽院主催コンサート」(イギリス)にて公演。2003年−2009年、American Wind Symphony Orchestraの客員打楽器奏者として新曲初演、ソロ演奏、室内楽、CDレコーディングを⾏う。200回を超える海外公演の他、国内では「⽂化賞授賞式記念式典」「愛⼦様御⽣誕祝賀コンサート」、オーケストラとの共演など公演多数。2012年12⽉「中村キース・ヘリング美術館」(⼭梨県)にて「⼤森たつしマリンバコンサート ―光と闇―」を開催。モダンアートとのコラボレーションを試みる。2014年より、清⾥萌⽊の村オルゴール博物館HALL of HALLS(⼭梨県)「⾳楽家と楽しむオルゴールの世界」に出演。2024年2月、電子楽器世界大手「コルグ」、衛星放送会社「WOWOW」ら大手 3 社による世界的プロジェクト、世界初の立体音響(AURO-3D)配信プロジェクト「3D Recording Project」に参加し、日米において演奏が生配信される。現在、テレビ出演、ラジオ番組のパーソナリティー、様々なCD・ CM・映画⾳楽のレコーディングに参加、SEKAI NO OWARI・槇原敬之・元ちとせ・スキマスイッチ・⼭崎まさよし、KinKi Kids等のミュージシャンのサポート等、活動範囲を広げている。⾃⾝のワークショップやマスタークラスも開催し、吹奏楽連盟主催のコンクール審査員を務めるなど、後進の育成にも携わる。
これまでに、世界初アンティークオルゴールとのコラボレーションCDアルバム「UTOPIA」と「UTOPIA2」、マリンバとピアノデュオCD「Lumière」をリリース。Coe percussion(アメリカ)、APinstrument(イタリア)アーティスト。
official website : tatsushiomori.com
YouTube: 「大森たつしチャンネル

神原瑶子
Yoko Kamihara

マリンバ

山形市出身。洗足学園音楽大学卒業。
これまでにエレクトーンを西村典子、 打楽器・マリンバを加藤詢子、 岡田知之、 藤井むつ子、 神谷百子、上埜孝、クリストファー・ハーディーの各氏に師事。現在山形市を拠点とし、プロ野球公式戦での国歌演奏、槇原敬之コンサートにも出演するなどジャンルを問わずマリンバ&打楽器全般の演奏を行う。国外でも活動の場を広げ、北米での公演は200回を超える。 演奏活動の他、音楽教室でのレッスンや音楽療法の活動も行っている。 マリンバ&パーカッション「チアーズ」 、マリンバ&パーカッション「パラマリー」、山形打楽団、PRO WiND023、アンサンブル「ボヌール」、トリコ・デ・ムジーク、Let’s各メンバー。    https://www.facebook.com/yoko.kamihara/

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